多くの日本酒には賞味期限の記載がないので、日本酒の賞味期限が気になる人もいるでしょう。
日本酒に賞味期限の表示がない理由や飲み頃時期を解説し、開封(開栓)から最後の一滴まで日本酒を楽しむ方法をご紹介します。
- 白鶴酒造オンライン編集部
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日本酒には賞味期限の記載がない?
食品の賞味期限が気になる人も多いと思いますが、日本酒のラベルや容器を見てみると、賞味期限の記載がないことがわかります。
代わりに製造年月の記載が見られます。
日本酒に賞味期限の表示がない理由は?
食品の表示については食品表示法に規定されており、多くの食品には賞味期限の表示義務がありますが、日本酒をはじめ、ワインやウイスキーなどのアルコール度数の高い酒類は賞味期限を表示しなくてもよいことになっています。
つまり、賞味期限切れという概念がありません。
日本酒に賞味期限の表示義務がない理由は、日本酒が長期保存可能な食品であるためです。
比較的アルコール度数の高いお酒である日本酒は、アルコールの殺菌作用により腐敗が進みにくい傾向があります。
日本酒は2年、3年と月日が経つと味や香りは変化しますが、腐って人の体を害することがないため、何年も貯蔵した日本酒を「熟成酒」として好んで飲む人もいます。
しかし、時間の経過とともにお酒の品質は変化するため、製造年月の記載が酒税法によって義務付けられています。
日本酒に書いてある製造年月とは?
賞味期限に代わって日本酒のラベルに表示されている製造年月は、日本酒を容器に詰めた時期を示しています。
日本酒は元来、搾ったお酒を数ヶ月間タンク内で寝かせることで味がまろやかになると言われており、数ヶ月間貯蔵した後に容器に詰めて出荷するのが主流です。
貯蔵期間はメーカーや商品によって異なってくるため、日本酒の製造年月はお酒を搾った日ではなく、いつ容器に詰めたかが記載されています。
そのため、表記された製造年月が近いからといってできたてのお酒であるとは限りません。
日本酒を美味しく飲める期間は開封(開栓)前後で変わる!飲み頃は?
日本酒に賞味期限がないとはいえ、時間の経過にともなって中身は徐々に変化します。
日本酒の種類や製法によって変化の度合いが異なることから、美味しく飲める期間の目安として「飲み頃期間」を独自に設定している日本酒メーカーもあります。
また、開封(開栓)しているかどうかや保存条件などによっても変化の度合いは異なってきます。
ここからは、日本酒の種類や条件別に飲み頃期間の目安をご紹介します。
未開封(開栓前)の場合
未開封(未開栓)の日本酒は酸化が抑えられるため、味や香りの変化度合いは比較的緩やかで、飲み頃期間も長めです。
通常の日本酒の場合
開封前(開栓前)の通常の日本酒についていえば、常温保存下での飲み頃期間は約1年間です。
通常の日本酒は、お酒を搾った後と容器に充填する前にそれぞれ「火入れ」と呼ばれる加熱殺菌処理を行うため、長期間品質を維持することができます。
この飲み頃期間を経過しても、未開封(未開栓)のまま保存されていた日本酒は、飲んでも体に悪い影響はありません。
ただ、時間とともに味や香りが変化するため、なるべく早く飲むことをおすすめします。
生酒・生貯蔵酒などの場合
生酒や生貯蔵酒はフレッシュさを酒質の特徴としているため、飲み頃期間は約9ヶ月と通常の日本酒と比べて短めになっています。
生酒は「火入れ」と呼ばれる加熱処理を一切行っておらず、酵素が活性状態で残っているため、通常の日本酒よりも酒質が変化しやすいのが特徴です。
飲み頃期間のうちに飲むことで、生酒特有の味わいやみずみずしさをより強く感じられます。
生貯蔵酒は容器に充填する前に一度だけ火入れを行うため、生酒に比べて酒質の変化は穏やかですが、生貯蔵酒のフレッシュな味わいを楽しむには飲み頃期間のうちに飲むことをおすすめします。
開封後(開栓後)の場合
開封後(開栓後)の日本酒の飲み頃期間は、開封前(開栓前)よりも短くなってしまいます。
開封後(開栓後)でも清潔な状態で栓をすればすぐに腐ることはありませんが、開封(開栓)すると雑菌によって味わいが変化してしまったり、周辺に臭いの強いものがあるとその臭いがお酒に移ってしまったりする可能性があるためです。
また、開封(開栓)すると酸化により香りや味わいの変化が開封前(開栓前)より進みやすくなります。
特に、酒質が変化しやすい生酒や生貯蔵酒は、開封後(開栓後)は飲み切ってしまうのがおすすめです。
飲み切れない場合でも栓をして冷蔵庫で保管し、可能な限り早く飲んでしまう方がよいでしょう。
日本酒は常温保存?冷蔵庫?正しい保存方法とは?
日本酒の良さである香りや味わいを目一杯楽しむためには、保存方法が重要です。
より長い期間、日本酒を美味しく味わえるよう、適切な保存方法について解説します。
高温多湿を避け、冷暗所で常温保存
日本酒は日光や蛍光灯などの光に弱く、紫外線に当たることで劣化が進みます。
光の当たる場所で保管すると成分が化学変化を起こし、茶色く変色したり、「日光臭」と呼ばれる独特の匂いが生じます。
日本酒は温度変化や高温にも弱いため、温度の安定した暗く涼しい場所で保管してください。
生酒や生貯蔵酒以外の通常の日本酒は、冷暗所であれば、冷蔵保存でなく常温保存で大丈夫です。
立てたまま、寝かさずに保存
前の章でも触れたように、日本酒は酸化により味や香りの変化が進みます。
そのため、瓶の中で空気に触れる面積の少ない縦置きが適しています。
お酒の種類によってはワインのように寝かせて保存することが推奨されるものもありますが、日本酒は立てたまま保存するのが基本です。
生酒などは冷蔵庫で保存
加熱処理の行われていない生酒や加熱工程の少ない生貯蔵酒などは、通常の日本酒より変化のスピードが早く、デリケートなお酒です。
温度の高い場所に置いておくと、みるみる味や香りが変化してしまいます。
そのため、未開封(未開栓)の状態でも、より温度の低い冷蔵庫での保存がよいとされています。
古くなった日本酒の特徴
日本酒に賞味期限はないものの、時間とともに状態は変化していきます。
古くなった日本酒はどのように変化していくのか、変化のポイントを見ていきましょう。
古くなった日本酒は「香り」が変わる
まず、日本酒は時間の経過につれて香りが変化します。
飲み頃を過ぎ、熟成が進んだ日本酒は、老香(ひねか)と呼ばれる独特の臭いを帯びてきます。
高温で保存された場合などは、特にこの老香を発しやすくなります。
日本酒の心地よい香りではなく、劣化臭のようなものを感じたら、その日本酒は古くなってきているといえるでしょう。
古くなった日本酒は「風味」が変わる
日本酒が腐ることはありませんが、時間とともに風味も変化します。
搾りたての日本酒にはフルーティーでみずみずしい味わいや、米由来の風味がありますが、古くなると徐々に味のバランスが崩れていってしまいます。
風味が変化しても飲めなくなるわけではないのですが、すっぱい・苦い・しつこいなど、飲みづらさを感じることが多くなります。
一方で、適切な条件下で保存された場合は熟成がうまく進み、まろやかな味わいに変化することもあります。
古くなった日本酒は「見た目」が変わる
香りや風味と合わせて、見た目も日本酒が古いかどうかの判断材料になります。
元々無色透明な日本酒が茶色っぽくなり、時間の経過とともに色が濃くなっていきます。
また、劣化が進んだ日本酒は白く濁っていたり、沈殿物が目立つこともあります。
白濁は、お酒中に残った酵素タンパク質が火入れによって固まった「白ボケ」の場合であれば、温めると消えてしまい、飲んでも問題はありません。
一方、鼻にツンとする強い匂いを感じる場合は「火落ち菌」と呼ばれる乳酸菌が繁殖している可能性が高くなります。
火落ちしているお酒を飲んでも人の体に害があるわけではありませんが、味わいや香りの劣化が顕著なため、飲むのはおすすめしません。
飲み頃期間を過ぎた古い日本酒の活用方法
ここまでみてきたとおり、日本酒は時間とともに変化こそしますが、古くなっても体に害はないため、冷蔵庫に余っている飲み頃期間を過ぎた古い日本酒にも様々な活用法があります。
飲み頃期間を過ぎた日本酒を捨てるのではなく、次のように活用して楽しんでみてはいかがでしょうか。
料理酒として煮物に活用
冷蔵庫で余ったまま飲み頃を過ぎてしまった日本酒は、料理酒として煮物などに使うことで再び大活躍してくれます。
米と水を主原料とする日本酒は、特に和食に用いる食材と相性が良く、食材の良さを引き立てつつも風味やコクを出すのに一役買ってくれる優秀な調味料となるでしょう。
さらに、食材の臭みをとったり柔らかくしたりする効果があるので、煮物にはもってこいの調味料です。
鍋料理の水の代わりに活用
ベースとなる汁にたっぷりの日本酒を使った鍋もおすすめです。
シンプルに昆布を敷いた鍋で水と日本酒を煮立たせ、豚肉やほうれん草などの野菜を入れて食べる鍋は「常夜鍋」と言われ、ヘルシーかつ簡単で毎晩食べても飽きないとまで言われています。
香りが良くあっさりとしているので、ポン酢や薬味をつけて食べると抜群に合います。
日本酒風呂にして美容に活用
古くなった日本酒には、お風呂に入れるという楽しみ方もあります。
方法は、浴槽にお湯をはり、そこにコップ1杯〜数杯分程度の日本酒を入れるだけです。
日本酒は古くからお清めに使われるなど「浄化する」イメージもあり、お風呂に入れることでより心も体も清められるような気がします。
実際に、日本酒風呂は日本酒に含まれるアミノ酸による美肌効果や血流促進による発汗や代謝アップなどが期待でき、心身ともにリラックスしてきれいになりたい方には特におすすめです。
日本酒の飲み頃期間を把握して楽しもう
いかがでしたか?
この記事にたどり着いた方は家で眠っていた日本酒を見つけて賞味期限が気になった方が多いのではないでしょうか。
日本酒には賞味期限はありませんが、飲み頃期間は存在します。
本来の味を楽しむために、できれば早めにお召し上がりいただくことをおすすめします。
もしも過ぎてしまっていても様々なことに活用できますので、まずは製造年月を確認した上で、中のお酒の状態も確認してみてください。
白鶴オンラインショップでは豊富な種類の日本酒を販売しています。
適切な保存方法や飲み頃をしっかりと理解して、お気に入りの日本酒を楽しんでください。